八重歯は矯正したほうがいい?放置するリスクと治療方法
笑ったときに犬歯が外側へ出ている「八重歯」は、個性的でかわいらしい印象を持たれることもあります。一方で、歯並びや噛み合わせの観点から見ると、清掃しにくい、ほかの歯に負担がかかるなどの問題につながることがあります。
八重歯は、単に犬歯が少し外側に出ているだけではありません。歯が並ぶためのスペースが不足していたり、顎と歯の大きさのバランスが合っていなかったりすることで起こることが多く、歯列全体の乱れの一部として現れている場合があります。
そのため、「見た目が気にならなければ放置しても大丈夫」とは限りません。八重歯の位置や噛み合わせ、歯磨きのしやすさなどによっては、虫歯や歯周病のリスクが高くなることもあります。
この記事では、八重歯とはどのような状態なのか、なぜできるのか、放置するとどのようなリスクがあるのか、矯正治療ではどのように改善するのかについて詳しく解説します。
八重歯とは?
八重歯とは、主に上顎の犬歯が歯列から外側へ飛び出したように生えている状態を指します。
犬歯は前から数えて3番目にある歯で、根が長く、噛み合わせにおいて重要な役割を持つ歯です。
犬歯が外側へ押し出されている状態
八重歯は、犬歯自体の形が特殊なのではなく、歯が並ぶためのスペースが不足し、犬歯が本来の位置に入りきれず外側へ生えているケースが多くあります。
犬歯は永久歯の中でも比較的遅く生えてくるため、それまでに前歯などが歯列のスペースを使ってしまうと、犬歯の並ぶ場所が不足することがあります。
八重歯は不正咬合の一つとして扱われる
八重歯は一般的な呼び方であり、歯科では叢生と呼ばれる歯並びの乱れの一部として扱われることが多いです。
叢生とは、歯が並ぶスペースが足りず、歯同士が重なったり前後にずれたりしている状態です。
八重歯ができる主な原因
八重歯ができる原因は一つではありません。
顎の大きさ、歯の大きさ、生え替わりのタイミングなど、複数の要因が関係しています。
顎が小さい
八重歯の大きな原因の一つが、歯が並ぶための顎のスペース不足です。
歯を並べる場所が足りない
顎が小さい場合、永久歯がすべて生えるためのスペースが足りなくなることがあります。
その結果、比較的遅く生えてくる犬歯が歯列の外側へ押し出され、八重歯になることがあります。
顎と歯のバランスが重要
顎そのものが極端に小さくなくても、歯が大きい場合には同じようにスペース不足が起こります。
つまり、八重歯は顎の大きさだけではなく、顎と歯の大きさのバランスによって生じます。
歯が大きい
日本人では比較的大きな歯と小さめの顎の組み合わせによって、歯が並びきらないケースが見られます。
前歯がスペースを使ってしまう
永久歯へ生え替わる際、先に生えてきた前歯が多くのスペースを使うと、後から生えてくる犬歯の場所が不足します。
そのため、犬歯が歯列の外側や内側に生えることがあります。
乳歯が早く抜ける
乳歯が虫歯などによって本来より早く抜けた場合も、永久歯の歯並びへ影響することがあります。
周囲の歯が移動する
乳歯が早くなくなると、空いたスペースへ隣の歯が移動することがあります。
その結果、後から生えてくる永久歯のためのスペースが不足し、犬歯が本来の位置に生えられなくなることがあります。
乳歯が長く残っている
逆に、乳歯が長期間残っていることも問題になる場合があります。
永久歯が正しい位置に生えにくくなる
乳歯が残っていることで、永久歯が別の方向へ生えてくることがあります。
犬歯が本来の位置から外れて生える原因の一つになることもあります。
遺伝的な要因
顎の大きさや歯の大きさ、骨格などには遺伝的な要素も関係しています。
両親に歯並びの乱れがある場合、子どもにも似た傾向が見られることがあります。
ただし、必ず同じ歯並びになるわけではなく、乳歯の状態や生活習慣なども影響します。
八重歯は矯正したほうがいい?
八重歯があるからといって、必ず矯正しなければならないわけではありません。
しかし、歯並びや噛み合わせ、清掃性に問題がある場合には矯正治療を検討するメリットがあります。
見た目だけで判断しないことが大切
八重歯をチャームポイントと感じている方もいます。
本人が見た目を気にしていないのであれば、美容目的だけで必ず治療する必要はありません。
ただし、歯科では見た目だけでなく、歯磨きのしやすさや噛み合わせ、将来的に歯を維持しやすいかどうかも含めて評価します。
清掃しにくい場合は治療を検討する
八重歯が大きく歯列から外れていると、歯ブラシの毛先が届きにくくなることがあります。
歯垢が残りやすい状態が続けば、虫歯や歯周病のリスクが高くなる可能性があります。
噛み合わせに問題がある場合
犬歯は噛み合わせの中で重要な役割を持つ歯です。
そのため、犬歯が正しい位置にないことで顎を動かしたときの力の分散がうまくいかない場合には、矯正治療を検討することがあります。
八重歯を放置するリスク
八重歯をそのままにしていても、必ず問題が起こるわけではありません。
ただし、歯列から大きく外れている場合には、長期的にいくつかのリスクが考えられます。
虫歯になりやすい
八重歯では歯同士が重なっていることが多く、歯ブラシが届きにくい場所ができます。
磨き残しが増えやすい
犬歯とその隣の歯が重なっている部分には、歯ブラシを正しく当てることが難しくなります。
その結果、歯垢が残りやすくなり、虫歯につながる可能性があります。
歯と歯の間の虫歯は気付きにくい
歯同士が重なっている部分の虫歯は、自分では見つけにくいことがあります。
痛みが出た時点では虫歯がある程度進行しているケースもあります。
歯周病のリスクが高くなることがある
磨き残しは虫歯だけでなく、歯ぐきの炎症にもつながります。
歯ぐきが腫れやすい
八重歯の周囲に歯垢が残ると、歯ぐきが赤くなったり出血しやすくなったりすることがあります。
長期間放置すると歯周組織にも影響する
歯周病が進行すると、歯を支える骨が失われることがあります。
そのため、八重歯そのものだけでなく、その周囲を清潔に保てるかどうかが重要です。
口臭の原因になる場合がある
歯と歯が重なっている部分に歯垢や食べかすが残ると、口臭につながる場合があります。
毎日歯磨きをしていても同じ場所に汚れが残っている場合には、デンタルフロスなども活用する必要があります。
犬歯本来の役割を十分に果たせないことがある
犬歯は根が長く、顎を横方向へ動かしたときに噛み合わせを誘導する役割を担うことがあります。
奥歯への負担が増える可能性
犬歯が大きく歯列から外れている場合、犬歯が噛み合わせに十分参加できないことがあります。
その結果、顎を横へ動かした際に奥歯へ力がかかりやすくなる場合があります。
ただし、噛み合わせは一人ひとり異なるため、八重歯があるだけで必ず奥歯に問題が起こるわけではありません。
唇や頬を傷つけることがある
犬歯が大きく外側へ出ている場合には、唇の内側や頬の粘膜に当たることがあります。
同じ部分に繰り返し口内炎ができる場合などには、歯の位置が関係していないか確認することがあります。
八重歯は自然に治る?
永久歯が生えそろった後の八重歯が、自然に正しい位置へ移動することは基本的には期待できません。
子どもの場合は成長によって変化することもある
永久歯への生え替わり途中では、犬歯が生えてくるためのスペースが変化することがあります。
ただし、明らかにスペースが不足している場合には、成長だけでは改善しないこともあります。
早めに相談するメリット
子どもの場合には、顎の成長や永久歯の生え替わりを確認しながら治療時期を判断できます。
必要に応じて永久歯が並ぶスペースを確保する治療を行うこともあります。
大人の八重歯は矯正で改善する
成人では顎の成長がほぼ完了しているため、歯を矯正装置によって移動させ、歯列内へ犬歯を並べます。
年齢だけを理由に矯正できないわけではありません。
歯や歯ぐき、歯を支える骨の状態を確認し、問題がなければ成人でも矯正治療を検討できます。
八重歯の矯正治療
八重歯の治療では、まず犬歯を正しい位置に移動させるためのスペースを確保します。
そのうえで、ワイヤーやマウスピースなどを使用して歯を少しずつ移動させます。
ワイヤー矯正
歯にブラケットを装着し、ワイヤーの力によって歯を移動させる治療方法です。
大きく外れた犬歯も動かしやすい
犬歯が歯列から大きく外れている場合には、三次元的に歯を動かす必要があります。
ワイヤー矯正では、歯の移動方向や角度を細かく調整しながら治療できます。
歯列全体を整えられる
八重歯だけを移動させるのではなく、ほかの歯の重なりや噛み合わせも同時に整えていきます。
マウスピース矯正
透明なマウスピース型装置を交換しながら歯を少しずつ移動させる治療方法です。
見た目が目立ちにくい
透明な装置を使用するため、仕事などで矯正装置の見た目が気になる方に選ばれることがあります。
取り外しできる
食事や歯磨きの際には装置を外すことができます。
そのため、固定式の装置と比べて歯磨きをしやすいというメリットがあります。
八重歯の程度によって適応が異なる
軽度から中等度の八重歯ではマウスピース矯正を検討できることがあります。
一方、犬歯が歯列から大きく離れている場合や、複雑な移動が必要な場合には、ワイヤー矯正の方が適していることもあります。
部分矯正で八重歯は治せる?
前歯だけを整える部分矯正を希望する方もいます。
しかし、八重歯では犬歯を歯列内へ動かすためのスペースが必要なことが多いため、部分矯正だけでは対応できないケースも少なくありません。
前歯だけの問題に見えても全体矯正が必要なことがある
犬歯を入れる場所がない状態で前歯だけを動かしても、適切な位置へ並べることはできません。
そのため、奥歯を含めた歯列全体を動かし、スペースを作る必要がある場合があります。
八重歯の矯正では抜歯が必要?
八重歯の矯正でよく聞かれるのが、「歯を抜かなければいけないの?」という質問です。
結論として、抜歯が必要かどうかは歯並びや顎の大きさによって異なります。
スペース不足が大きい場合
歯を並べるためのスペースが大きく不足している場合には、抜歯を検討することがあります。
小臼歯を抜歯することがある
一般的には犬歯そのものではなく、その後ろにある小臼歯などを抜歯し、そのスペースを利用して犬歯や前歯を並べる治療が検討されることがあります。
犬歯を抜くとは限らない
「八重歯が出ているから、その歯を抜けばいい」と考える方もいますが、犬歯は噛み合わせにおいて重要な歯です。
根が長く、口元の形にも関係するため、可能であれば犬歯を歯列内へ移動させる治療が検討されます。
ただし、歯の状態によっては異なる判断になることもあるため、検査が必要です。
非抜歯で治療できる場合
スペース不足がそれほど大きくない場合には、歯列を広げたり、奥歯を後方へ移動させたり、歯と歯の間を少量削ったりしてスペースを作る方法があります。
IPRを行うことがある
IPRとは、歯の側面をわずかに削り、歯を並べるスペースを作る処置です。
削る量は必要最小限に調整し、適応できる場合に行います。
八重歯を削るだけで治せる?
外側へ飛び出している犬歯を削れば目立たなくなると思う方もいるかもしれません。
しかし、八重歯の問題は歯の形ではなく位置にあることが多いため、歯を削るだけでは根本的な改善にはなりません。
健康な歯を大きく削ることには注意が必要
歯は一度削ると元には戻りません。
見た目を改善する目的で健康な犬歯を大きく削る場合には、将来的な歯への負担まで考える必要があります。
セラミックで八重歯を治す方法との違い
歯を削って被せ物を装着し、見た目上歯並びを整える方法が提案されることもあります。
矯正は自分の歯を移動させる
矯正治療では、基本的に天然歯の形を大きく変えず、歯そのものを適切な位置へ移動させます。
セラミックでは歯を削る必要がある
セラミック治療では、歯を削って人工の被せ物によって見た目を整えます。
治療期間を短くできる場合がありますが、健康な歯を削るという大きな違いがあります。
それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで選択することが大切です。
八重歯の矯正治療期間
治療期間は、犬歯がどの程度外れているか、必要なスペース量、抜歯の有無などによって異なります。
全体矯正では数年かかる場合がある
八重歯だけではなく歯列全体の噛み合わせを改善する場合には、一般的に数年程度の治療期間が必要になることがあります。
犬歯の移動距離が大きいと時間がかかる
犬歯が高い位置や大きく外側にある場合には、適切な位置まで移動させる距離も長くなるため、治療期間が長くなることがあります。
八重歯矯正の治療前に確認すること
適切な治療計画を立てるためには、詳しい検査が必要です。
歯並びと噛み合わせ
犬歯だけを見るのではなく、上下の歯並びや奥歯の噛み合わせまで確認します。
レントゲン撮影
犬歯の歯根の位置や周囲の骨、ほかの歯との位置関係などを確認します。
顎の大きさ
歯を並べるスペースがどの程度不足しているかを確認します。
抜歯が必要かどうかを判断するうえでも重要です。
虫歯や歯周病
矯正治療前に虫歯や歯周病が見つかった場合には、必要に応じて先に治療します。
特に歯周病が進行している状態では、矯正による歯の移動が歯周組織へ負担になることがあります。
八重歯の矯正後は保定が必要
矯正装置を外したら治療が完全に終わるわけではありません。
動かしたばかりの歯は、元の位置へ戻ろうとする性質があります。
リテーナーを使用する
歯を新しい位置に安定させるため、リテーナーと呼ばれる保定装置を使用します。
歯科医師の指示に従って適切に使用することが大切です。
定期的なチェックも必要
保定期間中は、歯並びが安定しているか、リテーナーに問題がないかなどを定期的に確認します。
子どもの八重歯はいつ相談する?
犬歯が実際に生える前でも、歯並びのスペース不足が予測できることがあります。
前歯がすでに重なっている場合
永久歯の前歯が生えた時点ですでに大きく重なっている場合には、犬歯が生えてくるスペースも不足する可能性があります。
永久歯がなかなか生えてこない場合
反対側の犬歯は生えているのに一方だけなかなか生えてこない場合などには、顎の骨の中での位置を確認することがあります。
必要に応じてレントゲンで確認し、適切な時期に対応します。
大人でも八重歯は矯正できる
大人になってから八重歯を治療することも可能です。
成人矯正では顎の成長を利用することはできませんが、歯そのものを移動させて歯列を整えます。
歯周組織の健康が重要
年齢そのものよりも、歯や歯ぐき、歯を支える骨が健康であることが重要です。
歯周病などがある場合には、まず状態を安定させてから治療を検討します。
まとめ
八重歯とは、主に上顎の犬歯が歯列の外側へ飛び出して生えている状態です。歯科では、歯が並ぶスペース不足によって起こる叢生の一つとして扱われることが多くあります。
主な原因には、顎が小さいことや歯が大きいこと、乳歯が早く抜けたり長く残ったりすること、遺伝的な要素などがあります。犬歯は比較的遅く生えてくるため、先に生えた永久歯によってスペースがなくなることで八重歯になるケースもあります。
八重歯は見た目の個性として捉えられることもありますが、歯同士が重なっていることで歯磨きが難しくなり、虫歯や歯周病、口臭などのリスクが高まる可能性があります。また、犬歯が本来の位置にないことで、噛み合わせに影響することもあります。
治療では、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などを使用して犬歯を歯列内へ移動させます。スペース不足が大きい場合には、小臼歯などの抜歯を検討することがありますが、すべての八重歯で抜歯が必要になるわけではありません。
歯列を広げたり、奥歯を移動したり、歯と歯の間を少量調整したりすることで、非抜歯で治療できるケースもあります。
また、八重歯そのものを削ったり被せ物だけで形を整えたりする方法と、矯正治療で歯そのものを移動させる方法には大きな違いがあります。健康な歯を長く維持するためにも、それぞれのメリットとデメリットを十分に理解して治療方法を選ぶことが大切です。
「八重歯を矯正した方がいいのか迷っている」「マウスピース矯正で治療できるか知りたい」「抜歯が必要なのか相談したい」という方は、上尾駅前デンタルクリニックへぜひご相談ください。
